田中 雅史 (FISCO 記者)
 
 
クレディアの破綻
(2007年09月21日)
 

クレディアが14日、民事再生手続の開始申立てを行ったうえで倒産した。同社がオリ ジネーター兼サービサーとなっている消費者ローンを裏付けとしたABSの残高は200億 円程度と見込まれている。日本のストラクチャード史上、ABSのオリジネーター兼サ ービサーの倒産事例としては7件目、ABL(信託借入方式)を含めると8件目になる。

日本で金銭債権をABSの形で証券化したオリジネーター兼サービサーによる過去の倒 産事例は1998年9月の日本リースと日本リースオート(ともに会社更生)、2000年5月 のライフ(会社更生)、01年3月のフットワークエクスプレス(民事再生、後に会社 更生手続)、03年9月のアエルおよびナイスの6件。また、これ以外にABL(信託借入 方式)で消費者ローン債権を裏付けとした資金調達を行っていた消費者金融会社のテ ィーシーエムが04年3月に会社更生手続開始の申立てを行って倒産した事例がある。

これらのオリジネーター兼サービサーの倒産事例7件に関し、コミングリングリスク は4件で顕在化し、ライフ、アエル、ナイスの3件のコミングリングリスクは明らかに ならなかった。アエルの事例では一部に申立て前の回収金引渡しが遅延したほか、ナ イス案件ではサービサーの交代を巡って軋轢が生じることに。ティーシーエムは保全 管理人が回収金の引渡しを拒んだが、最終的にはABLの一括弁済で処理されている。

コミングリングリスクは最近では証券化市場関係者の中でも軽視されがちなリスクだ が、サービサーが倒産する際には特別の配慮がなされない限り、“原則として顕在化 する”ことは十分認識する必要があるだろう。つまり、会社更生、民事再生、破産の いずれの場合でも、申立て前の原因によって発生した債権である回収金引渡し請求権 は特段何もしない場合、更生債権、再生債権、破産債権として扱われることになる。

今回のクレディアの倒産は過去の事例とは違い、過払金返還請求が一般に広がった渦 中での悲劇だったため、債務者の過払返還請求の処理に関する帰趨が注目される。消 費者金融専業会社による消費者ローン債権の証券化事例ではコミングリングリスクに 対応する信用補完を十分に用意しているケースが一般的には多いが、過払い金返還請 求が急増したのは昨年以降の現象に過ぎず、過払い金返還請求による債権の希薄化に 十分に耐えられるだけの信用補完措置を備えているABSはそう多くないのが実情だ。

 





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