ご挨拶

今、AIの応用はさまざまな分野で急速に広がりつつあります。しかし、経済やファイナンスの分野においては、他の分野にない特有の難しさがあります。その特有の難しさは、主として次の2つの理由によるものです。

1つ目は、経済や市場は自分自身の活動によって絶えずフィードバックを受けることでその統計的な性質が絶えず変化し続けていることです。特に金融市場では、参加者の学習などによって値動きパターンの変化のサイクルが短期化し続けています。

2つ目は、ファイナンスの世界の真に有効なAI技術は滅多に公表されることがなく、一部の(海外の)有力金融機関やスーパー・ヘッジファンドなどに独占されていて、他の多くの参加者はその技術を知ることが出来ないことです。こうした事情があるため、金融市場に関する分野などでは、AIの技術だけあってもなかなか思ったような成果をあげられないことが多いのです。

本研究所は、このような経済・ファイナンス分野特有のAI応用の難しさを解決する目的で設立しました。本研究所の特色はAI応用に関する第一級のノウハウを有するだけでなく、コア・メンバーの全員が金融市場の経験豊かなプロフェッショナルであることです。経済・ファイナンスの領域に真に有用なAIの応用技術を獲得するにはファイナンスの特性とAIの特質の両者の本質を同時に理解しながら試行錯誤を積み重ねることが不可欠です。2つの領域の知識と経験を有機的に結合できる本研究所であれば市場の特性や過去の出来事に対する経験を土台に、統計的な性質が絶えず変化し続ける対象をAIによって的確に捉え続けることが出来ます。

本研究所のもう一つの特徴は、ノウハウを出来るだけ秘密にして金儲けを優先させるというファイナンスの世界の常識とは反対に、啓蒙活動や分析結果の概要の発信などを通じて日本全体のファイナンス技術のレベル底上げに寄与することを目標にしていることです。つまり、どんなAIの使い方が社会にとって本当に有用なのかを皆さまと共に学びながら、共に少しずつ高い境地に到達していくことを目指しているのです。

これからの時代、経済やファイナンスの常識はすさまじい勢いで変貌していくことが、予想されます。本研究所はそうした時代の流れをキャッチアップし、皆さまに貢献できるよう努めて参りますので、どうぞあたたかいご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

AIファイナンス応用研究所所長 櫻井 豊