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◆ 久保田博幸氏との対談

日本国債は、財政赤字削減への動きが殆ど見られない中でFitchが格下げするなど環境は決して良くないにもかかわらず、ユーロ危機や株安地合いなどを受けて10年債利回りが1%を割り込んでいる。日本国債は何処へ行くのか、この市場を30年間観察し続けてきた久保田博幸氏に、編集人が訊いた。

倉都:日米そして英独など主要国で中長期金利が結構下がっていますね。日本も何だか2003年を髣髴するような展開です。この先、日本の長期国債利回りはどこまで下がると思いますか。

久保田:ギリシアがユーロから離脱するのではないかとの懸念や、スペインの銀行に対する懸念などから欧州の信用不安が再燃し、リスクオフの動きが強まっています。いわゆる安全資産とされる米英独などの国債が買われ、それぞれ過去最低水準を記録するか、それに近いところまで利回りが低下しています。

一方で日本の10年債利回りは6月に0.8%割れまで低下し、2003年7月以来の水準をつけてきた。ちなみに過去最低を記録したのは2003年6月で、当時の30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%となっています。

あの相場を振り返ると、目立ったのがメガバンクの一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いでした。VaRの仕組み上、変動値幅が少ないことでリスク許容度が拡大し、債券での収益拡大の狙いも手伝って、銀行は必要以上にポジションを積み上げたのです。注入された公的資金も国債に向かいました。

10年国債の利率が1%割れとなったことは何度かありましたが、その後の相場を見ると、同じようなことが繰り返されています。1998年末の「運用部ショック」、2003年6月の「VARショック」などの急落です。2010年10月にも債券相場は一時大きく下落しました。つまり、10年債の利率1%割れは、いずれも大きな反動でそのトレンドを終えています。

現在の長期金利水準も、かなりの警戒ゾーンだと言えます。ただ欧州不安が解消されない限り、米独などの長期金利低下と歩調を合わせて日本の長期金利もその低下余地を探ることでしょうが、その低下が大きければ大きいほど、反動も大きくなる。

GDPを見ても国内経済は比較的しっかりしており、物価も徐々に前年比プラス幅が拡大してくる可能性があります。一時的であれ、調整局面を迎えてもおかしくはないと思います。従って、長期金利の低下も限定的でしょう。少なくとも0.5%割れのような低下は考えられません。

倉都:ただ、ユーロ危機は半端ではありません。ギリシアのユーロ離脱コストは恐らく3,000億ユーロを超えるでしょうし、米中の景気も頭打ちです。海外不安に加え、日本も「ポスト復興需要」という成長材料が見えない。日銀による購入で需給もタイトであり、あと1−2年かけて長期金利に更なる低下圧力が掛かるのではないですか。

久保田:ただ今回の金利低下のスピードは遅く、また2003年当時を覚えている人が現場に多く残っているので、ここから更に買い上げるムードは乏しいと思います。やはり市場が覚えている過去の事象の意味は大きいでしょう。市場関係者は、銀行経営者も含めて、やはり反動を怖がっています。英独市場にとってこうした低金利は初めての経験なのでまだ警戒心は乏しいかもしれませんが、日本は明らかに違う。デフレもそろそろ出口が見えてくるように思います。

倉都:ただすぐに日本の長期金利が上昇し始める雰囲気はないですね。そんな低金利の国債は、日銀や銀行・公的年金以外の投資家にとってはもはやマトモな「投資対象」ではないように思えますが、どうでしょう。

久保田:保険会社にとっては利鞘という面で投資対象として厳しくなりつつあるのは確かだと思います。特に生保が気にする20年債の1%というのが大きなヤマですね。いま20年債はまだ1.6%ありますのでまだ買える対象ではありますが、1%に近付くほど2003年のような「反動」リスクに晒されることになるでしょう。

超長期債といえば、海外投資家の動向も注目されます。5月21日に日本証券業協会が発表した4月の公社債投資家別売買高(短期証券を除く)によると、海外投資家は1兆3616億円の買越しで3月の売り越しから大きく買い越しに転じました。彼等は超長期債を6111億円、長期債を4429億円、中期債を2920億円それぞれ買い越しています。海外投資家が超長期債を6千億円規模で買い越したのは、2007年11月以来のことです。海外投資家に関しては、短期債主体に大量購入していると言われてきましたが、このように超長期債も購入しているのです。アジアの中銀やヘッジファンドあたりでしょうか。もっともこれが長期的な運用資金だとは考え辛いですね。

個人については個人向け国債が主流となっておりますが、販売額は減少しています。個人向け復興債の発行で一時的に発行額は回復しましたが2012年1月の7454億円から4月には3848億円と再び減少しました。やはり利率の低さが個人向け国債の販売低迷の大きな要因でしょうね。

2011年12月末の投資家別国債保有シェア

民間金融機関 36.3%

民間保険・年金 26.3%

公的年金 9.2%

日本銀行 9.0%

海外     6.7%

金融仲介機関 4.8%

家計     3.8%

その他     3.9%

倉都:では長期金利が反転に向かう契機はどんなものがあると考えておられますか。Fitchは日本を格下げしましたが、殆ど影響ないように見えました。消費増税に関する議論にも、国債市場はあまり反応していないように思えます。

久保田:現在の日本の長期金利の低下要因は、円高にともなう日本国債への資金流入とともに、日銀の国債買入、デフレの継続等がありますが、英米独などの長期金利低下も大きく影響しています。まず海外の長期金利反転のきっかけを考えてみたい。

現在、これら海外国債に資金が流入しているのは、欧州の信用不安がなかなか収まらず、特にギリシアのユーロ離脱という懸念が残り、安全資産としての国債が評価されているからです。但し、これには信用不安を少しでも緩和しようと各国中銀によるこれまでの国債の買入や積極的な資金供給も影響しているでしょう。

積極的な資金を供給しても、行き着く先は国債という安全資産となる。これは長期金利の低下を促すものの、それによって不安が解消されるわけでもなく、景気に対する影響も効果は限定的となります。そうなると欧米でも出てくるのは中央銀行への期待であり、それに応えるとなれば、結果として国債はさらに買われることになります。

それが解消へ向かうきっかけとして、ギリシアのユーロ離脱回避で不安材料がひとつ減少することが挙げられます。これは、日米独英の長期金利反転のひとつの契機にきっかけになり得るでしょう。勿論反対にユーロ離脱が不可避となれば更なる金利低下となる可能性もありますが。

ただ過去の相場を見る限り、相場の反転は事前に予想されていたものよりも、意外な要因がきっかけとなることが多いです。また、気が付いたら反転していたということもあります。一時的な反動かと思っていたら、そのまま流れが変わっていた、という経験もあります。

日本の場合は、やはり財政リスクプレミアムがオンされる懸念が最大の反転契機でしょう。現時点では、市場はまだ日本の財政赤字削減姿勢を評価していると思いますが、今後の増税議論の行方や政治情勢次第、という感じはあります。政局の果てにポピュリズム的な政権が出来て、国債大量発行や日銀の国債買い入れ増などの流れが強まってくれば、市場は強い警戒感を示すようになるでしょう。

また、いま復興需要で銀行の貸出が伸びていますが、これが続くと国債購入意欲が減退していきます。それと貯蓄の減少が同期して、国債市場にネガティブな動きが出てくるというシナリオはあると思います。

倉都:日本の国債市場はむしろ超低金利に安住してしまって、政治家の財政赤字削減への動きを逆に鈍化させているようにも思えます。政治家に警告を与えるどころか、安心感を与えてしまっているようです。また海外勢の中には、以前から日本の財政赤字削減に対する不信感を持っている人が少なくないですね。彼等は、そんな日本国債市場をいまどんな思いで見ているのでしょうか。

ヘッジファンドなどは、引き続き日本の財政への懸念から売り仕掛けをしているところがあります。しかし、現在のところオオカミ少年が増えているだけという状況ですね。それに対し、先ほど言ったように円買いにともなう円資金の運用としてより長期の日本国債も購入する海外投資家も現れています。

欧州不安が一掃されない限り、こうした海外勢の日本国債買いは続くことになりそうです。また、中国や韓国と日本は、3か国で相互に国債を持ち合って経済協力を深めることで合意するなどしており、アジア諸国による日本国債への購入は今後さらに増加する可能性があると思います。

日本の貿易赤字や経常収支の変調で国債が売られるという説がありますが、これは怪しいと思います。またよくメディアで報道されるような、海外勢による国債先物切り崩しはあったとしてもことごとく失敗しています。本当に金利が上がるのは、仕掛け売りではなく「泣く泣く売る」という現物売りでしょう。

倉都:少し話題を変えますが、市場は首都圏の大地震リスクをどの程度まで認識しているのでしょうか。地震に関する物理的シミュレーションはよく見ますが、市場的、或いは財政的なシミュレーションはあまり見たことがありません。

久保田:1923年9月1日に発生した関東大震災によって、東京株式取引所(現在の東京証券取引所)の建物が全焼し、10月27日から焼け跡の天幕内で株式の現物取引を開始した、と東証のサイトの「日本経済の発展を支えた東証の足跡」に記されています。当時は日銀も被災したが、週明け3日には営業を再開し、焼損した紙幣の引換に応じています。ただし大蔵省印刷局も被災したため、紙幣不足懸念から200円という高額紙幣が国債証書の用紙を用いて大阪で作られたそうです。

関東地方の企業は壊滅的な打撃を受け、震災前に振り出した手形を決済することができず、それを抱えた市中銀行も資金繰りに支障をきたすようになった為、政府はモラトリアムを発動して、金融債権の支払期限を1か月間猶予しました。

次いで震災手形割引損失補償令によって、震災手形については特別に日本銀行が再割引しました。その際の損害は政府が補償することになりました。

もし、同じような直下型地震が首都圏で発生した際には、東日本大震災の際に取られた対応以上のものが必要になるでしょう。首都圏には企業だけでなく金融機関の本店も被災する可能性があります。バックアップシステムが整備されているとはいえ、かなりの混乱は避けられないでしょう。一時的にせよ停電の発生により電子決済が出来なくなり、現金がより必要になりますが、ATMが使えないケースも想定されます。

債券市場は、決済システムが生きていたとしても相場は当分の間停止状態になるでしょう。東証は、被害状況によるが一時的にせよ長期国債先物を停止する可能性があります。現物債は日本相互証券の売買が止まってしまうと取引の目安がつかなくなりますが、そもそも市場参加者が取引どころではなくなるでしょう。むしろ震災前に約定した取引の決済が問題視されるかもしれない。

現在の国債の売買は東京中心で行われており、首都機能がある程度回復されるまでは、日本の債券売買は一時的に停止されるかもしれません。3・11により漠然とした不安は抱きながら、そのリスクを考慮すると市場そのものが機能不全に陥る可能性があり、意識はしているものの仕事の上ではそのリスクを十分認識していないような印象もあります。

倉都:財政面からのインパクトはどうなりますか。東北大震災でも10兆円規模の財政支出が必要となりました。首都圏ではその何倍もの額が復興費用として必要になると思うのですが、市場はそんなリスクをある程度想定しているのでしょうか。

久保田:それは盲点ですね。正直言ってそこまで想定していなかったですし、市場関係者からもそうした話は聞こえてきません。被害総額や復興費用のシミュレーションは内閣府辺りではやっているのでしょうが、金融機関ではまだかもしれませんね。100兆円あたりの規模の話になると、市中消化は不可能なので、日銀直接引き受け論が浮上する可能性はあるでしょう。

倉都:不要な外貨準備を崩すことも一案でしょう。1兆ドル崩せば、復興費用に充てられるかもしれません。日銀引き受け論より健全だと思いますが、政治的な支持は得られないでしょうね。政治と言えば、先ほども少し触れましたが、政治不信は市場には無縁のように思えます。それは日本だけではないですが、市場と政治の関係をどう思われますか。

過去の国債市場を見ると、政治が一時的に相場攪乱要因になったケースはあります。たとえば2010年8月末の小沢ショックと呼ばれる債券市場の急落がありました。但しそれは一時的なものでした。

市場と政治は、あまり関係ないと言って良いと思います。現在、市場は「リスクオン」と「リスクオフ」を繰り返していますが、そこに政治的要因はありません。ユーロ危機においては多少関係あると思いますが、日本、特に国債市場では無いですね。

国債市場は財政再建の実現性に関して、自民党政権のころから裏切られ続けており、市場参加者もすでにそれに慣れてしまっているように思います。それが政治への意識を希薄化したように思いますが、いずれ大きなしっぺ返しが来ることもあるでしょうね。

倉都:久保田さんは以前から国債暴落は防止しなければならない、と訴えてこられてきましたが、巷には国債暴落説が飛び交っています。私も数年後には暴落とは言わないまでも危ない時期が来るだろうと思っているのですが、こうした暴落説をどう受け止めていますか。

日本の2012年3月末の債務残高は、たとえば国債及び借入金並びに政府保証債務現在高で約960兆円と1000兆円に近づいています。IMFにおける日本の債務残高のGDP比は2011年末で233.4%です。頼りにしていた経常黒字も貿易赤字で2011年度は大幅に縮小し、貯率も低迷しています。しかし、日本国債が暴落するような兆しはありません。

この背景には借金の93%程度が国内資金で賄われていることが挙げられます。個人や企業の預金が増加した半面、貸出が伸びず金融機関が新規国債増加分を買い支えている構図は続いていますし、日銀は輪番オペで毎月国債を1.8兆円購入し、更に資産買入等の基金による国債買入で今年末まで毎月別途2.1兆円買い入れることになっています。

このように国債需給が崩れる要因は当面見当たりませんが、ギリシア・ショックのような国債に対する信認維持という別の問題があります。何かしらのきっかけで、日本国債の信用が失墜する懸念がないとは言えません。消費増税法案の不成立などはその一例です。 デフレ脱却の可能性が強まれば金利の上昇要因ともなりますし、ポピュリズム政権の誕生で株価が上昇し、国債が売られるというシナリオはありますが、それも一時的ではないでしょうか。

以前は私も国債の堅調な相場は長続きしないと思っていましたが、日銀のスタンスを見て見方を変えました。日銀の購入による需給逼迫という要因は大きいです。それが財政ファイナンスという見方に変わる時が怖いですが、市場はまだそこまでの認識には至っていない、と思います。日銀総裁交代がその潮目を変える可能性はあるでしょう。

倉都:ただ、政府・財務省が指をくわえて国債暴落を呆然と眺めているようなことはないと思いますが、どうでしょうか。

久保田:そもそも日本の歴代首相や財務相が財政再建を唱えているのは、財政状況について財務省から詳細な説明があるとともに、国際会議などにおいて日本の財政を危惧する声が欧米から出ていることに影響されているからでしょう。

財務省は消費増税を主導していると同時に、国債の安定消化の為に国債管理政策も積極的に進めています。1998年末の運用部ショックが大きな契機となったのは間違いないです。これも国債の需給懸念による暴落を引き起こさせないための措置でしょう。それとともに日銀による国債買入も側面支援となっていますが、これは財政ファイナンスではないと主張しています。

財務省は特に「市場との対話」を重視しており、市場もこれを評価しています。この枠組みは上手く機能していると思います。

倉都:財務省の努力だけで暴落を阻止できるか、私はやや懐疑的ですが、日銀が最後の砦になるのは間違いないでしょう。その日銀はいつまで資産購入枠を拡大し続けるでしょうか。銀行券ルールは既に形骸化してしまったようですが。

久保田:現在のペースで銀行券を発行する場合、2012年末の残高の見通しは約83兆円となります。現在の国債買い入れペースでいけば、日銀の長期国債保有残高は12月末に92兆円と銀行券発行残高を上回ります。基金による国債買入は、輪番オペの国債買入とは別であり、銀行券ルールには抵触しないというのが日銀の公式見解ですが。

ただし日銀券ルールは何か根拠があってのものではなく、日銀が財政ファイナンスをしていないことを示すためのひとつの象徴でもあった。現実には国債に国庫短期証券の保有などを加えればすでに日銀券ルールに抵触しています。

デフレ脱却に向けて前向きの姿勢を示してしまった以上、日銀はコアCPIが1%となるまで追加緩和を行う公算が高い。基金による国債買入も増額余地はあると思います。いずれ、基金で買い入れる国債の残存期間を今後は5年程度まで伸ばさざるを得なくなる可能性もあります。それが財政ファイナンスを意識させていく要因になることは否定できません。

倉都:では日銀法改正への動きをどう思いますか。

久保田:塩崎恭久氏の以下のレポートが参考になります。私はこれが正論だと思います。

「日本経済が抱える本質的な問題の元凶を金融政策のみで解決できると考えるのは間違いだが、長期にわたるデフレの原因を日銀に求める気持ちは理解できる。そして、これまでの日銀が戦力の逐次投入的対応に終始し、説明も上手でないため、説明責任を十分果たしていないとの見方が多かったのも事実だ。原子力規制と同様に専門性が高く、政府の財源調達などに悪用されうる機能を持つために、独立性を与えられてきた。だが、その独立性を尊重されるために不可欠な、国民からの「信頼と信認」を日銀は失っているのではないか。だが、だからと言って中央銀行の独立性を簡単に反故にしてしまって良い訳はない。中央銀行が政治など外部からの圧力から独立していなければならないという仕組みは、歴史上、いろいろな失敗を経験したうえで生まれた、民主主義の知恵、資本主義の知恵であり、今となっては先進主要国の常識になったのだと私は思う。」

一方で自民党は、4月4日の午前の財務金融部会で日銀法改正案原案を公表しました。この原案では、物価目標を政府が定め、物価目標にその達成時期も明記し、実現できなかった際は、政府が日銀に説明を求めることができるようにするとともに、衆参両院の同意があれば総裁ら執行部を解任する権限も持たせています。物価目標の達成を目的として、為替の売買を日銀が実施できるようにすることも示しています。

この自民党案の内容は、リスクには目をつぶり、政府が定めた物価目標を達成するため、為替介入などを含めて、積極的に行わって結果を出さなければ、総裁を首にするのも厭わない、というものです。そのぐらいしなければ日本のデフレ脱却は不可能と見ているのかもしれませんが、大きなリスクを孕んでいます。

倉都:最後に、「国債ウォッチャー」として白川総裁へ何かメッセージはありますか。

久保田:中央銀行の金融政策ではアナウンスメント効果が重視されます。金融政策の変更の際に、より効果を高める工夫として、もっと総裁によるアピール力が欲しいですね。白川総裁は真面目さが持ち前ではありますが、それがやや仇とはなっている感もあります。

白川日銀が積極的に動いたのは事実です。モンスターオペ、新型オペ、包括緩和政策によるゼロ金利政策の再開、時間軸の強化、基金による資産買入、そして今年2月の実質的なインフレ目標導入など、多くの工夫がありました。ただ、それらはあくまで自らその効果に疑問を投げかけた量的緩和政策が再開できず、その代替政策であったような印象が拭えません。

FRBやECBの金融緩和策が国債市場に大きな影響を与えていたように、日銀も一定の効果を挙げるためには、市場やメディアの日銀への信認を高めることも重要でしょう。一層の「市場との対話」を期待しています。